「日本は自殺者が多い」と言われていますが、年間の自殺者数をご存知でしょうか?近年の景気回復に伴い平成28年度は直近20年で最小でしたが、それでも年間21897人の方が亡くなっています。イメージが湧きにくいかもしれませんが、例えば乳がんの年間死亡者数は14000人程度であり、交通事故の死亡者数が4100人程度であることと比較すると非常に大きい数字であることが分かります。また死因別で見ても20〜30代では死因の第一位が自殺となっています。
さらに自殺者の3割弱は「被雇用者・勤め人(サラリーマン)」であることもあり、職場での自殺予防対策が近年強く求められています。
では従業員の自殺を予防するために、企業は具体的に何をすればいいのでしょうか?まず理解いただきたいのは「冷静な精神状態で自殺する人はほとんどいない」ということです。ある研究よると、自殺者の9割前後はその直前にメンタルヘルス不調をきたしているといわれています。自殺自体を完璧に防ぐことが難しいことも考慮すれば、周囲の対応として最も大切なことは「メンタルヘルス不調を予防し、悪化のサインが出た際には早急に適切な働きかけをする」ことです。
もう一つ知っておいていただきたいキーワードが「ゲートキーパー」です。ゲートキーパーとは「コミュニティにおいて身近な人の自殺のサインに気づき、その人の話を受け止め、必要に応じて専門相談機関につなぐなどの役割が期待される人」のことを指し、会社でいえば上司や同僚、人事担当者などがそれに当たります。皆さんがゲートキーパーとして気をつけるべきポイントを以下に記載します。
・準備なしに辛い話を聞くと、聞いている側の心身が拒絶反応を示してしまうことがあります。
まずゲートキーパー自身がしっかり話を聞く心の準備をすることが大切です。
・プライバシーの守られた環境でないと安心して深い話をすることができません。
会議室などを利用して話しやすい環境・雰囲気を作りましょう。
・積極的なアドバイスよりも「悩みを聴く」ことが大切です。
傾聴、受容、共感の姿勢で辛い気持ちを受け止めましょう。
・「あなたのことを心配している」という気持ちを正直に伝えてあげてください。
サポーターがいることを知るだけでも自殺を踏みとどまるきっかけになります。
・ゲートキーパーが一人で適切な解決策を提案するのは難しいことが多いです。
悩んでいる本人や家族など他のサポーターも巻き込み、一緒に解決策を考えましょう。
・本当に追い詰められた状況であれば、医療機関などの専門家につなげる必要があります。
専門家への相談窓口も事前に確認しておきましょう。
・ゲートキーパー自身の体調管理も重要です。
相手を心配するあまり、自分にストレスを溜めすぎないように注意しましょう。
なお毎年3月1日から31日は自殺予防月間であり、国を挙げて様々な取り組みがなされています。新聞報道によると過労自殺対策を強化するために国の指針である「自殺総合対策大綱」も今年中の見直しが検討されているようです。自殺問題は起きてからでは手遅れなので、トラブルが顕在化する前に「相談されたらどう対応するか」についてイメージトレーニングを行っておくようにして下さい。
Column記事
2017.03.27
職場での自殺予防について
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