2017年1月7日 日本経済新聞「がん患者雇用に奨励金 東京都17年度予算案、企業を支援」
東京都は7日、がんや難病の患者の雇用に積極的な企業を支援する制度を2017年度に導入することを決めた。患者本人ではなく、雇用する側の企業を支援するのは都道府県で初めてという。17年度予算案の知事査定を進めている小池百合子知事は7日、記者団に「患者の希望や能力、疾病の特性に応じて活躍できる社会の実現が求められる。働き続けるため、企業に態勢を取ってもらうことが目的だ」と説明した。
新たに導入する制度では、患者を新規採用した企業に、患者1人当たり40万~60万円の奨励金を支給する。仕事と治療の両立などに配慮した雇用計画を策定し、がんや難病の患者を6カ月以上継続雇用した企業が対象になる。社員の復職を支援するプランを策定したり、病気休暇制度などを設けたりする企業にも助成金を出す。
近年、日本人の2人に1人は一生の間に少なくとも一度はがんを罹患すると推計されています。しかもその3割を20−64歳の就労世代が占めます。つまり労働者の15%程度は、退職するまでにがん治療と仕事との両立をどうするか、、という問題に直面することになります。私自身も、産業医として従業員から以下のような相談を受ける機会が少なくありません。
・治療に専念するために仕事を辞めるべきか悩んでいる。
・週1日外来で抗がん剤治療をしているが、残りの4日は仕事を続けたい。
・1日15分の放射線治療を1−2ヶ月行う必要があるので、その間は時短勤務で働きたい。
・がん治療で免疫が落ちている間は在宅勤務を認めて欲しい。
以前は人事担当者と相談しながらケースバイケースで対応する事例が多かったのですが、2016年2月に厚生労働省から「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」が公表されました。このガイドラインには書式テンプレート等も載っており、従業員の両立支援を行う上で非常に参考になります。
(2016年2月の本コラムもご参照ください)
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000113625_1.pdf
残念ながら両立支援は(一時的にではありますが)会社の労務コストを上昇させることが多いため、人事担当者が支援に消極的なケースも珍しくありませんでした。本記事のような奨励金支給は、負担感を軽減することにより会社の積極的かつ適切な行動を促す、とても有用な政策ではないかと評価しています。
仕事に習熟した労働者の脱落を防ぐことにつながる両立支援対策は、長期的に見れば会社の発展につながり、社会全体の生産性向上にも資するものです。また会社は積極的に両立支援を進めることで、当事者だけではなく周囲の労働者に対しても「安心して働ける職場である」というメッセージを送ることができます。病気の人が出てから対策を考えよう…ではなく、この機会にそれぞれの会社に合った両立支援対策を考えてみてください。
Column記事
2017.01.10
(記事紹介)東京都ががん患者雇用に奨励金
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