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東京銀座の産業医事務所 セントラルメディカルサポート

Column記事

2017.01.21

運転業務の適正配置について〜てんかんなど健康問題に関連して〜

交通事故による死傷者は近年減少傾向(平成27年の発生件数:536,899件、負傷者数:666,023人、死亡者数:4,117人)ですが、それでも交通労働災害は全産業に占める死亡災害のうち2割以上を占め、労災防止の重要課題です。
その一部には、てんかんや糖尿病治療に伴う低血糖をはじめとした健康問題に関連する事故が少なからず含まれていると考えられており、社会的にも厳しい視線が向けられています。従業員の健康を守るためだけではなく労災防止や社会的責任を果たすためにも、健康問題と運転業務について考えてみましょう。

・運転に支障が出るおそれのある病気
安全に運転するためには、①周囲を確認する情報収集能力 ②危険を理解する認知能力 ③適切な対応をする運動能力 が必要です。これらに悪影響を与える可能性のある健康問題として、主に以下のようなものがあります。

情報収集能力の問題:視力・視野障害、難聴 など
意識の問題:てんかん、睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシーなど)、低血糖症、不整脈 など
認知の問題:認知症、高次脳機能障害、精神疾患(統合失調症、躁うつ病、アルコール依存症など)、薬の副作用 など
その他の問題:脳・心臓血管障害、腰痛、四肢機能障害 など

・てんかんとは?
てんかんは突然意識を失って反応がなくなるなどの「てんかん発作」をくりかえし起こす病気です。患者数は日本全体で60万~100万人といわれています。てんかん発作は脳細胞の一部に異常な電気活動が生じることで発症しますが、適切な抗てんかん薬を服用することで大部分の患者さんでは発作は抑制され、通常の社会生活を支障なくおくれます。一方で「しばらく発作がないので大丈夫だろう」と抗てんかん薬を安易に自己中断すると、ある日突然再発することもあります。

・薬の影響について
睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、糖尿病薬など、交通事故リスク増大につながる可能性のある薬は少なくありません。「薬の内服=運転禁止」ではありませんが、治療中の病気自体も事故リスクがあることが多いため慎重な対応が必要です。気になった場合は主治医や産業医に早めに相談してください。
なお市販の風邪薬や花粉症の薬にも眠気の副作用があります。不適切な薬が入っていないか、会社の薬箱の中身も確認してみてください。

・運転制限の検討について
安全と就業機会のバランス、社内外との公平性から就業制限の有無を検討する必要があります。危険を放置してはいけませんが、不当な労働機会の剥奪にならないように注意してください。

検討する上でのポイント:
・通勤と業務での運転を分けて考える。
・代替業務の有無を検討する
・長距離運転の方がハイリスク(残業状況も要確認)
・主治医や産業医の意見を確認する
・運転免許取得、更新時に利用されている質問票を活用する

病気は個人差が大きく、運転の可否について判断するのは簡単ではありません。しかし問題が起きてからでは遅いので、健康リスクを抱えている従業員を把握して安全と就業機会のバランスを考えながら対応を検討しましょう。
なお、心筋梗塞や致死性不整脈、脳卒中、大動脈解離などの突然発症する疾患による事故も少なくありません。これらは生活習慣病対策や禁煙でリスクを減らすことができますので、今回挙げた病気を持っていない従業員も日々の健康管理をしっかり続けてください。

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